ESSAY

 第2回 佳作

2.5人の貴重なクリスマス

成合 好美 様 (福岡県)


 朝からテレビはクリスマス一色だった。私は妊婦で悪阻(つわり)がひどく、ここ1ヶ月程布団とトイレとお風呂の往復の日々が続いていた。
夫は立ち上げたばかりの仕事が忙しく、休みの今日も出かけてしまった。
クリスマスくらい家に居てくれてもいいのに…。いつも仕事で居ない夫への寂しさと悪阻(つわり)のひどさで動けない自分が歯がゆくて、私はすっかりめいってしまっていた。
 どのくらい経っただろうか。いつの間にか寝ていたようで、夫は帰宅していた。
夫は、私の顔を心配そうに覗きながら、呟いた。
 「体が楽だったら、出かけようか」
本当は少しきつかったが、夫の誘いがうれしくて鏡を覗き、スカートをはいた。
用意をしていると段々ウキウキ、ワクワクしてきた。こんな気持ちになるのは、久しぶりだった。
 夫は一軒のお店に入ると名前を告げた。予約をしていてくれたのだ。
そこは、おしゃれでおいしいと評判で「いつか行こう」と夫と話していたお店だった。
 「最近さ、一緒におれんでごめんね。今日はクリスマスだから…」
と夫は、照れくさそうに笑った。その時、店員さんに目で合図をしたような気がした。
あれ?何だろう?そう思った時、1人の店員さんが私たちのテーブルに近づいて来た。
 「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
と店員さんは、一皿の料理と笑顔を残していった。私は驚きとうれしさで、何も言えなかった。
夫は、得意げな顔をしていた。体の奥から熱くなって、夫と目の前の料理が涙でぐにゃぐにゃに歪んでいった。
 お皿の上にはオムライス。しかも最近話題の卵がトロトロしたオムライスだった。
 「久々に笑ったね。最近、悪阻(つわり)で何も食べんし、二、三日前トロトロのやつが食べたいって言っとったけー。 これだったら食べれるかと思って…。どうぞ、食べて」
と、夫は私にオムライスを勧めてくれた。私は、恥かしくなった。自分一人がいっぱい、いっぱいになって、仕事の夫を責めてしまったのに。夫は私の事を考えていてくれた。いつもそうだ。
夫は最後に最高の演出で、驚きのプレゼントと笑顔をくれる。
 「ありがとう」
夫に笑顔でこたえた。オムライスは、トロトロ卵がチキンライスに丁度よく絡み合い、最高のクリスマスをより引き立ててくれた。
 後日夫は、あの日は朝から様々なお店に電話をし、トロトロオムライスを作るお店を探していたのだと話してくれた。あのお店も本当は作っていないが、特別に用意していただいたということも…。
 あれから長男が誕生し、またクリスマスが近づいている。
今年はあのお店へ、家族3人でお礼にいきたい。
そしてステキなクリスマスにしようと、密かに計画中の私です。

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