ESSAY

 大賞

嫁ぎ行く娘へ

杉本 晃子 様


 恵理、婚約おめでとう。花嫁姿、楽しみにしています。
 桜のつぼみが少しふくらみかけた頃でしたね。二人で父さんと母さんに会いに来てくれたのは。春とは言えまだまだ肌寒かったのに、二人が温かくて、優しくてキラキラ輝いていたのをしっかり覚えています。今まで見たこともないようなあなたのとびきりの笑顔と、あなたを優しく包んでくれている彼の誠実な気持ちが、可愛さゆえに、できることなら一生手許にあなたを置いておきたい、そんな親のわがままを、あっさり吹き飛ばしてくれました。多分、一生忘れない、彼との素敵な出会いです。
 覚えておいて下さい。あなたは両家の初孫で、天国のおじいちゃん、おばあちゃんは本当に宝物のように可愛がってくれました。母さんもお会いすることなく、早くに天国へ旅立たれてしまった父さんのお父様も、ずっとあなたのことを守ってくれていたと思っています。空の上でみんなで喜んでくれているでしょう。でも、一番喜んで一番淋しく思っているのは、きっとお父さんですね。
 恵理は、父さんが古い古い腕時計をしているのを知っていますか。オイスターパーペチュアル。いつごろから使い出したんでしょう。ずっと使わずにしまっていました。「自分にはまだ早い」と。父さんの尊敬する、亡くなったお父様の大事な形見です。十数年前、父さんが支店長になったころ、そしてあなたや弟が子供ながらに、しっかり意志を持った言葉を発するようになったころかしらね、「もうそろそろはめてもいいかな」と使い始めたのは。そして、今日も父さんの腕にはオイスター。
 もうじき結納ですね。素敵なエンゲージリングを選んでいただいたと聞きました。父さんは彼にサブマリーナーを送りたいと言っています。可愛くて大事な大事な私たちの娘の幸せを心から願い、たくさんの想いをロレックスに込めて、彼に、そして二人で築く未来にロレックスを送ります。どうか明るく健やかな家庭を築いて下さい。

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